ロンドンで学生をやっていた頃、日本食はレア物でした。
今では普通のスーパーで結構日本の食材は買えますし、
和食のお店もたくさんでき、和食というものは珍しいものでもなく、
普通に食べるようになりましたが、
当時は特別な日本食品の専門店でしか食材は買えなく、
とても貧乏学生には買える値段ではありませんでした。
母から定期的に、インスタントラーメンやお味噌汁、
お醤油パックなどが入った「故郷便」が届いていたので
なんとか救われていました。
学生時代、初めて作った「日本の味」が鳥の唐揚げ。
子供の頃から唐揚げ大好きでやっぱりこれが一番恋しかった食べ物でした。
作ったこともなく、ネットもまだない頃だったので
作り方も調べることもできずレシピは適当。
お醤油に、長ネギらしきもののぶつ切りとニンニクとシェリー酒を入れて
鳥のもも肉を漬け込んで、
片栗粉の代わりのコーンスターチをつけて揚げたら
それが本物の唐揚げの味がして涙が出そうだったのを今でも覚えています。
お醤油さえあれば他の材料はなんとかなるんですね。
さて、その唐揚げですが、今でもレシピがほとんど変わっていません。
唯一変わったのが、今はもうシェリー酒ではなく、本物の日本酒を使っていること。
自分の唐揚げが世界一だと思っているかなり自信満々ですが、
料理って、自分が作るものが世界一だと思って作って食べたいですよね。
美味しく食べるには「これが世界一」だと思わなければ。
食べてくれる人にもそう思ってもらえれば嬉しいけれど、
全く同じように思ってくれなくてもいいと思っています。
みなさん、好みが違いますし、きっとその人はその人で
自分で作る唐揚げが世界一だと思っているのかもしれませんし。
でも、30年近く、こだわって作り続けてきた鳥の唐揚げが
世界一美味しい唐揚げではないと証明された日は
きっとショックでしょうね。